私は38歳の男性で現在は果物店を営んでいます。
今から3年前までは会社員をしていました。
当時は仕事が激務で毎日残業ばかり。
休日出勤も当たり前の中、支払われる残業手当は会社が決めた上限があり、大部分がサービス残業でした。
若い頃はそれでも会社の為だと頑張っていたのですが、結婚し、子供が生まれるようになると、考え方が変わってきました。
家に帰ると家族はいつも寝ていて家族との触れ合いはほとんど無く、子供はいつまで経っても私に馴染んでくれません。
休日出勤により、家族サービスの時間が取れず、妻とは喧嘩が絶えない毎日。
昔は会社を大きくしたいという一心でがむしゃらに働いて来ましたが、家族が出来た事で、自分の人生をもっと大切にしたいと考えるようになりました。
しかし気が付けばもう35歳。今さら資格を取得したり、転職したりはリスクが高すぎる現状。
自分の将来一体どうなって行くんだろうと半分パニック状態でした。
そんなある日、昔の友人達とお酒を飲み、仕事の不満や将来の不安をみんなで語り合いました。
そしてその帰り道。
飲み屋のあるシャッター通りの商店街中に、80歳は超えていそうなお婆さんが机の上に手相占いと書いた置物だけを置いた状態で座っていました。
料金は2000円。決して安いものではありませんでしたが、友人達と話のネタになるかもと思い、それぞれ占ってもらう事にしました。
まずは友人2人が占ってもらい、皆んなが不安がっていた将来はどうなっていき、今のままで果たしていいのかを占ってもらいました。
友人2人の結果はいずれも、辛い事あるけど今のまま頑張っていけば、大きな失敗なく人生を歩んでいけるような内容でした。
何だこんな内容なら高いお金を払ってまで占わなくてもと思いましたが、私だけしないという訳にもいかず、しぶしぶ占ってもらいました。
すると私の占いの時だけ、何やらしかめたような真剣な顔。
もしかして悪い内容なんじゃないかとドキドキしていると、占い師は「あんたは何故か出世しないのに社長になると出ている。」と言いました。
その結果に友人2人は大爆笑。
私も「おいおい。出世しないのにどうやって社長になるんだよ。」と呆れましたが、まあ話のネタ代にはなったかなと思いました。
それから1ヶ月ほど経ったある日、実家の両親から電話が掛かってきました。
内容は、果物店を営んでいる親戚のおじさんからお店を買い取って商売してみないかとの内容でした。
その背景には、親戚のおじさんには3人の息子がいましたが、誰もお店を継ぐ意思が無かったのでおじさんの代で終わってしまうとの事情がありました。
お店は大阪にある有名な商店街に位置し、年商も相当見込め、このまま売却してしまうと他の果物屋が入ってくる可能性があるとの事で、それは悔しいからぜひ私に2代目として頑張って欲しいとの事でした。
店舗と土地代はかなり破格な値段でしたが、商売経験のない私が上手くやれるのか不安でした。
その時、あの占い師の「出世しないけど社長になれる」という言葉を思い出し、この事だったのかと全身に衝撃が走りました。
占いの結果を信じて突き進んで見ようと考え、妻の反対を押し切り、貯金をはたいて店舗を購入。
私がお店を継いだ後、急にライバル店が店を閉めたので、商店街の果物屋さんは私のお店だけになり、まさに独占状態。
年収はサラリーマン時代の倍にまで増え、朝は早かったですが、その分、早く帰宅が出来、家族との時間も持てるようなになりました。
本当に出世しないのに社長なれ、占いの予言通りになりました。
後日、お礼を言おうと商店街に行きましたが、占い師はおらず、その後も会う事は出来ませんでした。
あの占いのおかげで自分の人生が開け、今でも本当に感謝しています。